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執筆者の写真ERIKA MIKI

キロク



金曜


病院で最後の話し合い

緊張しながら病院へ

話し合いの後弟に会えた

おしっこが出ないらしく

全身の浮腫みがすごい

水風船みたいになってしまっている

呼びかけに目が開くものの

眼球はあちこちに向いてしまっている

挿管が苦しいのか顔を歪ませたり

嗚咽が出て苦しそうすぎる

こんな状態で何日もいたのか

そしても少なくともあと3日過ごすのか


夜、苦しくて呼吸が出来なくて

嗚咽で目が覚める

まだ2時間しか寝ていない

泣きながら呼吸をして

呼吸が苦しいのはこんな短時間でも辛いと

また泣く

寝たら今度は悪夢をみて

怖くて怖くてまた泣く



土曜


ぼんやり目が覚める

何も考えていなくても勝手に涙がでる

壁にもたれかかってズルズルと体を引きずり

トイレに行く


体が死ぬほど重い

ベットに戻ったらもう起きられない

息子にフルーツを買ってきてと頼む

グルテンフリーのパンケーキミックスでパンケーキを作ってと言ったら

しぶしぶながらに作ってくれる

寝たり起きたりを繰り返し

弟の散歩コースのサンポートに行きたくなるが

心は行きたいのに

体が重すぎて動けない



日曜


まだ涙がでる

だけどははことに行く準備をしているうちに

段々とマシになっていく

みそ汁とおむすびを作りながら

心が無になる

でも事情を知ってるお母さん達に会うと

心が崩れるのではないかと不安になる

悩んだけれど

弟のパネルと絵を旧ははことから

新ははことの玄関に移動させる

お母さん達に見て欲しかった

パネルの弟は元気で聡明で

金曜に病院で見た弟とは別人で

胸が痛くなる

仕事がはじまると全て消えて

ただ没頭する

みそ汁が美味しくてしみこむ


終わってからまた廃人に戻る

ひとつ片付けて放心して

ひとつ片付けて放心してを繰り返す

玄関に座り込んでパネルの弟を眺める

「しあわせな心をもとう」

あんたはどんだけ素晴らしい存在なんですか

恨んだり妬んだり

親にどうしてこんな体なんだとか

不平不満を言うのが普通だと思う

けど言わない

全て内包して生きていた

素直でまっさら

人を気遣える

今与えられている条件の中で

感謝して生きている

無いものに目を向けるのではなく

あるものをみている


守っていくとか思っていた私は

彼に支えられていたんだと今になって気づく



月曜日になるのが怖い

だけど

早く終わらせてあげたい

重たい肉体を脱いで

軽くなってくれたら良い

でも辛い


その無限ループの感情で忙しい

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