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執筆者の写真ERIKA MIKI

2022,4,29

雨が強い


朝父親から電話

「そろそろみたいだから顔見てやって」

「え、どういうこと、それ誰が言ったん?」

「看護師さん」

「わかった」


短い会話で電話が切れる


美容室へ行き

しみこむで新しいスイーツの仕込みをする

でも疲れが酷くて眠くて仕方がない

いつもは仕込みをしたり

仕事をしているときそんな風にならないのに

眠くて辛い


終わらせてから病院に直接行きたかったけれど

眠くて死にそうだったのでひとまず家に帰る


ベットに横になった途端

母から電話が入る

「ゼロになっちゃった」と泣いている

「すぐ行くけん!」


部活から帰ってうどんを食べていた息子に

「すぐ行くよ!!」

多分10秒くらいで家を出る


法定速度を守らず雨の中を走る

病院の対応はここでもやはり腹が立ったが

とにかく押し切る


1秒でも早く会いたかった


病室に入ると母親が弟の右手を握って泣いている


近づくと血の気のひいた唇の弟


よくがんばったね


だけど挿管は父親が到着したら外すらしい


早く外してくれというとそう言われた


父親が到着して

当直の医師が死亡確認をし


まだ挿管を外さずに

家族で時間を過ごされますかとか言うので

「とにかく早く外してください」というと

やっと外してくれることになる


病室から一旦皆出され

待合室で待つ

大きな窓から光が差す

分厚かった雲が晴れて

仏生山あたりだけ青空が見えている





よかった

本当に楽になったんだ


そこから葬儀や弟の体をどこに持っていくのか

電話対応に追われる


数時間後

葬儀屋が引き取りにきて

皆で移動する

弟の顔に白い布が被されていた

一気に死んだ感が出る

いやだ、それ外してと言いたくなる

けれど廊下を通るのにそうしなければならないのかもしれないので言葉を飲み込む


車に乗せるのに病院のベットから

ストレッチャーにのせかえる


ベットのシーツは背中の大きな褥瘡で

血や滲出液で汚れていた


どれほど痛かっただろうかと思うと

シーツの血液から目が離せない


外は寒くてすっかり暗い

弟を乗せた車を見送る

看護師2名が深くお辞儀をしている

苦しみが終わったんだと安堵の気持ちと

悲しみで胸がはち切れそうになる


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