私が19歳くらいの時
弟が死にかけたことがある
「私の人生はもう良いので彼にこの体をあげてください」と
毎晩お祈りをしていて
19にもなってバカバカしい話だけれど
大真面目に強く強く祈っていて
「私は幸せになってはいけない」と
自分に勝手に呪いをかけていたらしい
その呪いは解かねばならない
弟はそんなこと望んでいないし
誰も望んでいない
ただのバカだ
それを手離すととても楽になった
そして
弟が私と「分離」した状態の時は
悲しみと苦しみで胸が張り裂けそうだったけれど
ある日私の中に弟がいることに気づいて
内包している場合は悲しいという感情にならないことに気がついた
どこかで聞いたことのある台詞だけれど
こういう感覚にやはりなるんだなと感心する
やっと取れた休みで
自然の中に出かけているとき
「ねぇ、勇ちゃん」
「ねぇ、勇ちゃん」
「ねぇ、勇ちゃん」
「ねぇ、勇ちゃん」
エンドレスに呼びかけていることに気がつく
鳥の羽音や木の葉のザワザワ
金木犀の香りや木漏れ日
美しい建造物
ゴツゴツした岩場を登る危うさ
ふわふわの芝生の上に座る雰囲気
弟が車椅子では決して行けなかった場所
感じられない感覚
この目と耳と体で感じることで
弟と一緒に体験出来ているんだなぁと
なんとも言えない感情になった
「ねぇ、勇ちゃん」
「ねぇ、勇ちゃん」
「ねぇ、勇ちゃん」
本当にエンドレスに呼びかけてしまう
なんの涙か分からないけれど
海を見ながら勝手に流れていく
Commentaires